耳は幼児の段階で出来上がっているから手間が必要
『もう一回言って?』
『ごめん、ゆっくり言ってくれない?』
相手にお願いしすぎて会話が進まなくなった経験がありますか?
言語学習では文法や話すことに意識が向きがちですが、聞く力がなくては会話能力を培うチャンスも逃してしまいます。
しかも、音を聞き分ける聴解能力は幼児段階で出来上がってしまいます。
外国語学習について多くの研究がなされていますが、万人に効果が出るトレーニングがなく伸ばすのも難しいのも特徴です。
私も学習者として苦労しましたし、指導者としても工夫が必要でした。
トップダウンとボトムアップ
聞く力は読む力と同様に受動的な言語能力で、学習者はインプットされた情報を受け取る際にトップダウン、ボトムアップと呼ばれる処理を頭の中で行っています。
トップダウン処理
単語や文法全体を聞き取り1つ1つ訳していくのではなく、話されている話題から自分の知っている情報を当てはめながら推測し話し手を理解する処理法。
ボトムアップ処理
聞き取った単語やフレーズから話し手の意味をくみ取りながら相手を理解していく方法。
例えば、ハロウィンの時期にかぼちゃやろうそくの話をしていたら全部の言葉を聞き取れなくても『ジャックオーランタンを作る話かな?』とトップダウン処理で推測ができます。
逆に、単語やフレーズを聞き取って理解した場合はボトムアップ処理をしたことになります。
もし知らない話題や参考になる情報がない場合、自分の聴解能力と言語理解に頼るボトムアップ処理が必要になりますし、十分に聞き取れなかった場合、手元にある情報でトップダウン処理でも対応できます。
聴解能力をネィティブレベルにあげればもちろん問題ないですが、そこまでの間は双方バランスのとれたトレーニングが重宝されます。
行った実験で分かったこと
私が修士課程で行った実験の1つに、IELTSで得たレベルと実際の英語聴解力を比べたことがあります。
対象:英語を外国語として学習してIELTS5.5以上の様々な職業や国籍の学習者
内容:馴染みのない話題についての視覚的情報がない音声のみのオーディオを使って、学習者がボトムアップ処理で聴解を理解できるかを調べた。
この実験で一番興味深かったのは、IELTSのレベル順に学習者の順位がつくと思いましたが、数名の結果が自身のIELTSのレベルよりずいぶん低かったことです。
(IELTSを受けたことがある人は知っていると思いますが、聴解試験の題材は馴染みのあるものも多くあります)
『普段は映像や画像、話している相手をみながら聞くから音声だけだとわかりにくかった』
『音声だけだと集中できなかった』
行った実験はボトムアップ処理に頼った純粋な聴解能力を調べるものだったので、普段トップダウン処理に頼り、ボトムアップ処理能力は比較的弱いという結果です。
その聴解能力の目的は何か?
トップダウンもボトムアップ処理も両方バランスよく伸ばすのが理想ですが、
視覚的情報や持ち前の情報に頼り聴解能力を伸ばしている学習者は、能力試験によくある音声のみの聴解試験には弱くなる傾向もあります。
言語学習の目的によって目的にあった聴解トレーニングを意識的に行う必要がありますし、どちらに傾いているのかも学習者は知っておくと意識的にトレーニングをすることができます。
同じ受動的言語能力の読む力は自分のペースで処理することができますよね。
聞く力はそれができないので集中力の有無も密接にか関わってくるから厄介です。
コメント