みんな違ってみんないい
前回の記事ではBrownと Levinsonのポライトネス理論について書きました。
この理論は人には2つの異なる欲求があって人とコミュニケーションをする際にはお互いの“フェイス”と呼ばれる欲求に配慮しながら言語活動をするというものです。
この2つのフェイスは人に好かれたい・承認されたいというポジティブフェイスと他人から支配されずに自由でいたいネガティブフェイスに分けられています。
日本が階級社会でネガティブフェイスに重きを置くことは前回の記事に書いた通りですが、今回は具体例を挙げてこのポライトネス理論が異文化間でのコミュニケーションにどう作用するのかについて書こうと思います。
同じ英語圏でも違うポライトネス
言語が同じだとコミュニケーションの特徴もそのまま引き継いでいるように思うかもしれません。
Hallの集団主義・個人主義の分類では英語圏は個人主義に位置しますし、Hofstedeの文化構成の配分をみても各国とても似通っています。
(下のリンクには例として日本、イギリス、アメリカを表示しています。詳しいグラフの見方は下の記事にあります。)
きっとGoogleに『イギリス人』と入れたら『礼儀正しい』、『アメリカ人』と入れたら『フレンドリー』などと出てくると思います。
これは誰が決めた印象でどうしてそのような印象が与えられたのでしょうか。
フェイスを脅かす行動とは?
自分のフェイスを満たしつつ相手のフェイスも侵さないように言語活動をすることでコミュニケーションが成り立つとしているのがこのポライトネス理論です。
おもしろいのは、属する文化圏によって自分のフェイスが脅かされたと思う瞬間が微妙に違うということです。
人になにかを頼む行為は相手のネガティブフェイスを脅かします。
相手の手間と時間をもらう言動だからです。
断る行為は相手のポジティブフェイスを脅かします。
依頼や約束を断るときは丁寧に理由も添えますか?
理由は相手のポジティブフェイスに配慮した言動ですし、一定の定型文に当てはめて礼儀正しい断り方をしたらそれはネガティブフェイスにも配慮した方法でしょう。
『親しき中にも礼儀あり』
ネガティブフェイスに重きを置く文化は敬意を持ちながらコミュニケーションをする傾向があります。
一方で、ポジティブフェイスに重きを置く文化では褒めたり、承認したりしながらコミュニケーションをします。
仲間意識が高いこの文化圏では親友の家で冷蔵庫の中身を食べつくしても笑って済むような関係も多いでしょう。
逆にネガティブフェイスに重きを置く文化ではありえないやり取りかもしれません。
別の例『褒める』をみると受け取られ方が様々です。
褒めるは本来ポジティブフェイスを満たすものですが、極端な話、相手によっては自分をよく見ているから褒めるものを見つけたんだ。
と領域の侵害、ネガティブフェイスを脅かされたと感じる人もいます。
この人が相手に思う感情は『フレンドリー』ではなく『馴れ馴れしい』かもしれません。
受け取られ方も関係もそれぞれ
コミュニケーションは理論や習慣だけでは一括りにできない複雑なものです。
同じ日本人でも違う考え方の人もいますし、国が違う相手が誰よりも自分を理解してくれることだってあります。
関係も様々です。
ネガティブフェイスに重きを置くカップルなら相手のSNSをフォローせずお互いの自分の空間を大切にしたりするでしょうし、ポジティブフェイスに重きを置くカップルならお互いのSNSのパスワードまで知っていたりする関係もあるでしょう。
どれも良くてどれも違う関係です。
他人の言動や関係を自分の物差しで測れないからこそ色んな人がいて、考え方があるのだと思います🌻
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